高温高圧X線実験の発展と地球深部物質の研究

摘要

本稿は，2007年9月にイタリアのカタニアで開かれたAIRAPT21におけるブリッジマン賞受賞講演の内容を元にまとめたものである。 今回の受賞理由は，高圧X線その場観察実験の開拓と地球深部物質に関する先駆的研究であったが，AIRAPTは日本の高圧力学会と同様，圧力をキーワードとしてさまざまな分野の研究者が集まる会議であるので，受賞講演は広い分野の聴衆に興味を持ってもらえるように，地球科学の細かい議論は最小限にとどめた。 その代わり高圧実験技術がどのように進歩し，それが地球深部構造の理解にどのように寄与してきたかというサイエンスの大きな流れを，筆者自身が体験してきたことがらを中心に紹介したつもりである。 これからの高圧科学の発展の方向を考える上で，少しでも参考になる点があれば幸いである。