マルチアンビル装置とMg_2Si熱電材料の高圧合成

摘要

高圧合成の研究に取り掛かることにしたが，実際に研究を始めてみるとその世界はやはり高圧研究特有の世界で，初心者にはすぐに理解できない工夫·知恵が至る所に施されていた。当初は，DACでの研究同様に細かい世界を極めることに専念し，その技術修得を研究室の学生に求めたが，学生個人の向き不向きがあるため学生個人の能力に依存しない実験手法を確立することの重要性を感じるようになってきた。高圧合成に取り組んで5年が経過し，ようやく当研究室としての実験手法が確立してきた時に本特集の原稿依頼が来たので，これまでの改良過程を経て確立した研究スタイルを紹介しながら熱電材料を対象にした高圧合成法による新規物質の研究経過を解説させていただく。本稿により高圧合成を気楽に始めるための手助けとなれば幸いである。