企業のV字回復をめざして--産業再生機構の役割と,活用のメリットについて

摘要

産業再生機構は，日本の産業と金融を一体的に再生することをめざして，官民で設立された株式会社である。 同機構の設立は，2002年10月30 日に政府が発表した「改革加速のための総合対応策」にはじまる。その後，同機構の組識,運営の骨格をつくる法案が作成され，2003年5月8日から，㈱産業再生機構が業務を開始した。 発足当初，マスコミには「政府資金が流れて銀行を救済する」という論調もあり，再生支援候補が報じられると「小さな案件が多く，とても10兆円は使い切れない」，あるいは「産業再生なのだから大きな企業の再生をするべき」ということもいわれた。 本当のところ，その役割はどこにあるのだろうか。 「当機構の役割は，民間ではできない事業再生をスピーディーに展開することにあります。 収益力がある事業基盤を持ちながらも，過剰債務などが原因で本来の力を発揮できないでいる個々の企業を再生することなのです」（伊藤豊上席審議役·以下同）.