統合失調症治療におけるN-acetylcysteineの有用性

摘要

統合失調症の病態仮説として，酸化ス卜レスや神経炎症の関与が最近注目されている.N-acetylcysteine (NAC)は，内因性抗酸化物質glutathioneの前駆物質で，抗酸化作用，抗炎症作用や神経保護作用を有する.NAC は欧米では栄養補助食品として一般的に用いられており，種々の精神疾患に対して有効であるという報告が多い. 慢性期の統合失調症患者を対象とした無作為化比較試験では，NACの治療増強効果と優れた安全性が報告された. また，統合失調症の神経発達障害モデルを用いた最新の研究から，NACは統合失調症の病初期や前駆期における 治療効果を有する可能性が示唆されている.ただし現時点では，統合失調症のこれらの病期において，NACの有 効性や安全性を検討した研究はほとんどない.本稿では，統合失調症やその前駆期に対するNACの有用性に関 して，現在までの知見と我々の研究成果を紹介したい.