糖尿病および肥満が中枢神経機能に与える影響

摘要

糖尿病や肥満が末梢組織のみならず中枢神経系機能をも障害し，うつ病や不安障害などの精神神経系疾 患の発症リスクを上昇させることが明らかになつている.これまでに我々は，糖尿病ならびに肥満が精神機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として，streptozotocin (STZ)誘発糖尿病ならびに食餌誘発性肥満モデル 動物を用いて，恐怖条件付け試験，ホールボード試験，高架式プラットホーム試験，尾懸垂試験などの種々の行 動薬理学的検討を行ってきた.その結果，STZ誘発糖尿病ならびに食餌誘発性肥満モデルマウスでは，不快情動 反応や不安様行動，うつ様行動が増加していることを明らかにしている.このことは，糖尿病ならびに肥満時に おいて，ストレスに対する抵抗性が減弱している可能性を示唆している.さらに，STZ誘発糖尿病ならびに食餌 誘発性肥満モデルマウスにおける不快情動反応には扁桃体におけるグルタミン酸神経系の変化が，不安様行動に は前頭前皮質におけるセロトニン神経系の変化がそれぞれ関与していることも明らかにしている.本稿では，我々 の基礎研究の成果を踏まえて，糖尿病時ならびに肥満時におけるストレス関連行動の変化について概説する.