交感神経刺激によるモルモット精管平滑筋の収縮機構と温度負荷効果 前立腺肥大症の高温度治療に関する基礎的研究

摘要

(目的)前立腺肥大症に対する高温度治療の効果発現機序を解明するために,モルモット精管をモデルとして用い,電気刺激およびnicotineによる収縮の成分を分析するとともに,精管に対する温度効果を検討した.(方法)精管を摘出し,銀電極を通して懸垂し発生張力を記録した.電気刺激は5,10,40Hzで0.3msec持続の走電流10パルス(10mA)を空気隔絶条件で行った.収縮に対する温度効果は43,45,46,47℃,1時間の温度負荷を行い,25℃の対照と比較した.(結果)Nicotineによる収縮は交感神経終末から共放出されるnoradrenaline(NA)とATP成分(NATP),およびα_1受容体の活性化により筋から放出されるATP成分(α-1-ATP)から成っていた.電気刺激による収縮には神経原性と非神経原性成分の2種類が存在した.前者はNAとN-ATPで,後者はalpha_1-ATPと,筋由来のATP成分(m-ATP)および未知の物質'X'による成分であった.収縮高と神経原性成分は43℃の温度負荷では全く影響を受けなかったが,45℃以上では著明に抑制され,47℃では全く消失した.(結論)電気刺激による精管の収縮はα_1,N-ATP,α_1-ATP,m-ATPとXの成分で構成されていた.伏在交感神経は47℃,1時間で完全に不活性化した.BPHの高温度治療に必要な最低温度は47℃であることが示唆された.