医療訴訟事例から学ぶ（52) 一医療従事者間のいじめが原因で自殺した事例一

摘要

本事例は，医療従事者間のいじめに関するものであり，A病院に勤務していた21歳男性准看護師Bが， 上司である27歳男性看護師Cから約3年近くに及ぶ執拗ないじめに耐えかね，自宅で電気コードを使い首を吊って自殺した事案である.（さいたま地裁平成16年9月24日判決，事件番号平成15年（ヮ）第581 号）A病院は病床数99であり，多くは女性看護師であつたが，B (最年少）を含め5名の男性看護師がおり，先輩後輩の上下関係が厳しく，先輩の言動には絶対的なものが存在していた.このため，一番先輩のC が権力を握り，後輩を服従させる関係が続いていた. CのBへのいじめに関しては，帰宅したBを電話で呼び出したり，又，買い物，肩もみ，自宅の掃除，車の洗車，Cの長男の世話，Cが風俗店に行く際の送迎， パチンコ店の順番待ち，馬券の購入，Bへの金銭的負担を強いたりなどしていた.平成13年秋頃より，B は当時交際していた彼女Dに，友人らのいじめによる辛さを訴えるようになった.また，平成13年12月の職員旅行で，Bに好意を持っている事務職の女性とBに性的な行為をさせ，それを撮影しようと企てた.