未服薬統合失調症者と健常者の視覚誘発事象関連電位(P300成分) 情動の影響をふまえて

摘要

1)服薬経験のまったく無い,末服薬統合失調症者(26名)と健常者(26名)において視覚誘発(「泣き」または「笑い」の標的刺激)事象関連電位のP300成分を検討した.2)視覚誘発P300振幅·面積は,末服薬統合失調症者と健常者の間に有意差は観察されなかった.3)視覚誘発P300潜時は,未服薬統合失調症者が有意に健常者群より短縮した.4)視覚誘発P300振幅面積は,健常者では「泣き」標的提示暗が「笑い」標的提示時より有意に大きかったが,末服薬統合失調症者では, 2標的表情間に有意差はなかった.5)視覚誘発P300潜時は,健常者では「泣き」提示暗が「笑い」提示時より有意に短縮したが,未服薬統合失調症着では, 2表情問に有意差はなかった.6)以上より,表情標的刺激を用いた視覚誘発事象関連電位のP300成分は.健常者と末服薬統合失調症者で反応が異なり,否定的表情である「泣き」の表情提示における鑑別の可能性が示唆された.