急性発症した両眼性網脈絡膜循環障害を伴う樹氷状血管炎に対し積極的なステロイド全身療法および血管拡張療法を施行した1例

摘要

背景:樹氷状血管炎への副腎皮質ステロイド薬治療は一般に奏効するとされるが,網膜血管閉塞例では予後不良の報告が多い.急性発症の両眼性網脈絡膜循環障害を伴う樹氷状血管炎に長期の積極的なステロイド全身療法および血管拡張療法を施行し視機能が改善した1例を報告する.症例:69歳男性.起床時左眼視力低下にて同日初診.視力右1.0,左0.1,左眼前眼部に軽度炎症所見,網膜血管の白鞘化,網膜出血,視神経乳頭の軽い浮腫を認めた.蛍光眼底造影は左眼腕-網膜循環時間遅延,網膜動静脈の蛍光漏出高度.翌日,視力右0.1,左手動弁,両眼前房炎症,および動静脈の白硝化が悪化し樹氷状を呈した.眼ドップラーで両眼眼動脈描出可,網膜中心動脈,後毛様動脈確認不可.急性発症の両眼性網膜中心動脈と後毛様動脈の循環障害を伴う樹氷状血管炎と診断し,積極的なステロイド全身療法を7か月,血管拡張療法を3か月施行し2年後視力両眼とも0.5に改善した.結論:高度循環障害を伴う樹氷状血管炎でも長期治療で視機能改善の可能性がある.