うっ血型網膜中心静脈閉塞症治療中に網膜動脈分枝閉塞症を合併した1例

摘要

網膜中心静脈閉塞症における網膜動脈循環の関与は，未だ不明な点が多い．症　 例：高血圧治療中の73歳男性．主訴は一過性の左眼視力低下．初診時左眼底には網膜静脈の軽度の拡張，蛇行があり，蛍光眼底造影では静脈充盈時間が遅延していたため，うっ血型網膜中心静脈閉塞症と診断した．プロスタグランジンElの点滴および抗血小板薬の内服，星状神経節ブロックなどを開始したが，4日後に網膜動脈分枝閉塞症を併発した．その後，線溝療法を施行したが，4週後には典型的な出血型網膜症に移行した．症例の動脈循環障害発症後の眼血流の変化を超音波カラードップラ　 法を用いて測定した．うっ血型網膜中心静脈閉塞症の治療および経過観察中に動脈循環障害を続発し，出血型網膜症に移行した症例を経験したので報告した．その経過から，出血型網膜症の発症には網膜動脈循環障害が関与する可能性が推定された．