再発翼状片に対する羊膜移植術併用有茎結膜弁移植術の治療成績

摘要

目的：再発翼状片に対するマイトマイシンC (以下MMC)を併用しない羊膜移植術併用有茎結膜弁移植術の治療成績の検討.対象と方法：1998年11月-2007年7月に山口大学医学部附属病院眼科にてMMCを併用せず羊膜移植術併用有茎結膜弁移植術を施行し，半年以上経過観察を行うことができた35例39眼(男性17例18眼，女性18例21眼,年齢は61.5 (+-) 9.8 ：平均値(+-)標準偏差(27-76) 歳を対象に，診療録をもとにレトロスぺクティブに検討した.対象症例は平均既往手術回数が2.9(+-)1.5回は-10回)と複数回再発し手術を繰り返していた症例であつた.平均観察期間は45.1 (+-)28.5か月であった.結果：対象の39眼を長期にわたり経過観察した結果，術前Grade3の大きな翼状片29眼中27眼(93.1 %)は再発を認めなかったか，あるいは再発後はより小さな翼状片となり，再発の程度は抑制されていた.同時に，合併していた瞼球癒着·眼球運動障害はそれぞれ15眼中5眼(33.3%)， 24眼中11眼(45.8%)の症例で改善が得られた.再発は術後6か月までの間に多く認めたが，長期観察の結果，術後2年以上経過した時点で再発した症例も1例認めた.再手術を要した症例は再発した16眼中6眼(37.5%)であった.結論：MMCを併用しない本術式で複数回手術を繰り返していた症例の59.0%で再発を防ぐことができた. また再発した症例においても翼状片のサイズが縮小した.しかしながら再手術を要した症例もあり，本術式には限界があると思われる.瞼球癒着や眼球運動障害程度が重度の症例ではMMCを併用した術式を考慮する必要があると考えられる.また瞼球癒着や眼球運動障害の程度判定に加え，複視の自覚もあわせて術式選択の際の指標となりうると考える.