涙液減少型ドライアイの重症例に対する新しい涙点閉鎖術と術後成績

摘要

目的：これまで，各種の外科的涙点閉鎖術が報告されているが，術後経過においてさまざまな頻度で涙点の再開通が生じるため，確実な涙点閉鎖の得られる術式が求められている．我々はより確実な涙点閉鎖術をめざして，既存の方法に改良を加えながら，一定の術式を確立したので，その方法を紹介するとともに，従来の方法と比較検討した結果について報告する．対象と方法：対象は，上下涙点閉鎖術の適応と考えられた涙さ夜減少型ドライアイの計33例（男性4例，女性29例，平均年齢54．3歳）である．A群12例（男性2例，女性10例）には，既存の方法あるいはその改良法が施行され，B群21例（女性19例，男性2例）には，今回報告する新しい外科的涙点閉鎖術が施行されている．これらA，B群について，術前，術後の角膜上皮障害（AD分類，A：範囲，D：密度，ADそれぞれ0～3点の4段階で評価）および，再手術の必要性について比較検討した．新しい方法は，①新しく開発したジアテルミー針による涙小管上皮の焼灼，②ドリルを用いた確実な涙小管上皮除去，⑧眼瞼縁に平行な対側2か所の涙点切開，④涙点切開方向に垂直な涙点縫合（10－0ナイロン糸，または，8－0吸収糸で3針）から成る．結果：A群の角膜上皮障害は，平均経過観察期間7．2か月の間に，術前，術後でそれぞれ，A，Dが2．4，2．1，A，Dが1．8，1．9とAのみが有意に改善した（p＝0．027）が，全12例中，点眼のみで管理し得たのは2例のみであった．一方，B群では平均経過観察期間8．2か月の間に，術前，術後でA，Dが2．1，2．2，A，Dが1．0，1．3と有意に改善し（A，Dともにp＜0．001），21例全例で点眼のみで管理できるようになった．結論：本術式は，従来の術式より確実な涙点閉鎖の方法として位置付けられると考えられた．