小眼球症マウスにおける眼瞼発生過程の組織学的検索

摘要

Ctsマウスは，Jcl：ICRマウスの突然変異種で，そのホモ接合体は先天白内障とそれに伴う小眼球症を発症する．今回我々は，Ctsマウスを用いて生後の瞼裂幅と眼瞼の発生過程を組織学的に検索した．ホモ接合体の瞼裂幅は生後2～6週までのどの時期においても正常マウスに比べて有意に狭かった．次に，胎生14日から生後14日までのホモ接合体と正常マウスの眼部にヘマトキシリン·エオジン染色を行い，光学顕微鏡で観察した．両マウスの眼瞼はともに胎生16日に閉瞼し，生後14日には開瞼した．正常マウスとホモ接合体ともに，眼輪筋の原基は胎生16日に，毛包とマイボーム腺の原基は胎生18日に識別が可能となリ，眼瞼発生過程において両マウス間で組織学的に有意な差は観察されなかった．従来，眼瞼の発生は組織相互作用を受けず，self－determiningといわれてきたが，今回の結果はそれを支持するものと考える．