急速進行性腎炎の臨床

摘要

急速進行性糸球体腎炎（RPGN）は最も予後の不良な腎炎症候群の一群である．病理学的には多数の糸球体に細胞性から線維細胞性の半月体の形成を認め，半月体形成性糸球体腎炎（crescentic glomerulonephritis）へと進展するのがRPGNの典型像である．中でも中高齢者に多いmyeloperoxidase（MPO）型抗好中球細胞質抗体（ANCA）陽性のRPGNは，生命予後，腎機能予後が極めて不良であることが明らかとなった．RPGNは急速な経過のために治療開始時すでに高度腎機能障害まで進行している症例が多く，本疾患の予後改善のためには早期発見と早期治療開始が必須である．厚生省進行性腎障害調査研究班RPGN分科会では平成元年以降の我が国のRPGN症例を集積し解析し，その結果をもとに2002年4月には厚生労働省進行性腎障害調査研究班ならびに日本腎臓学会の合同委員会より，「急速進行性腎炎症候群の診療指針」が刊行された．本稿では，内外の本疾患に関する知見をもとに，RPGN症例の疫学，診断，治療について概説する．