骨粗鬆症患者の経口ビスホスホネート療法中に発症した上顎骨壊死に対しPTH療法が行われた1例

摘要

骨粗鬆症患者に対して広く使用されているビスホスホネート製剤は，その強力な骨吸収抑制作用から，多くの患者において新規骨折の発生を抑制していることが想定される。一 方で，近年，ビスホスホネート使用患者において，その骨吸収抑制作用が1つの発症の要因と考えられる顎骨壊死が報告されるようになつてきた。自験例において，長期の経口ビスホスホネート療法.中の骨粗鬆症患者で上顎骨壊死を確認し，外科的処置およびparathyroid hormone (PTH)製剤であるテリボン⑧を投与した結果，治療開始後3力月で上顎骨壊死部の明瞭な骨新生を観察し，6力月で成熟した骨形成を認めた。また口腔内所見は，自発痛を伴う半球形状の膿瘍が改善し，創部は上皮化傾向を認め，骨露出等の所見が認められなくなった。以上より，外科的な処置の施行およびPTH製剤の投与により,比較的短期間に顎骨壊死 を治癒させることが可能と考えられた。