慢性リンパ性白血病の肝浸潤により急性肝不全を合併したB型肝炎ウィルスキヤリアの1例

摘要

慢性リンパ性白血病(CLL)の肝浸潤は経験するが，肝不全を合併することはまれである.今回，CLL肝浸潤により肝不全を呈したB型肝炎ウィルス(HBV)キャリアを経験した.患者は62歳，男性，2000年10月よりCLLとHBVキヤリァの診断で経過観察していた.2010年6月に全身倦怠感のため受診した.末梢血ではリンパ球数増多と肝機能障害，CTでは肝脾腫·縦隔腹部リンパ節腫脹を認めた.また，血中HBV-DNAは高値であつた.本症例の肝不全はHBV活性化によるゥィルス性肝炎およびCLLの肝浸潤が原因として考えられた.HBV 活性化を疑いエンデ力ビル(ETV)とinterferon-alpha (IFN-alpha)を投与してHBV-DNAは低下したが，黄疸が進行して急性肝不全を合併した.肝生検の結果，病理組織学的にCLLの肝浸潤が証明され，rituximabを投与した.Rituximabとinterferon-aの治療後にCLLの細胞数は著明に減少した.CLLを伴うHBVキヤリァの肝不全の症例においては，鑑別のために肝生検が必要と考えられた.