乳房に限局した顆粒球肉腫

摘要

症例は16歳の女性で，右乳房の腫瘤の摘出により非Hodgkinリンパ腫と診断され，当科に入院となった。 前医の生検標本では肉腫を疑わせる病理所見があり，悪性リンパ腫と確定できなかった。 入院後10日目に両側乳房に新たな腫瘤が出現したため生検を行った。Touch preparation標本で，ミュロベルオキシダーゼ陽性，naphthol AS－D chloroacetate esterase染色陽性の異型細胞を認め顆粒球肉腫と診断した。 この時の骨髄所見に異常なく，染色体は正常核型であった。 腫瘍細胞と骨髄細胞のWT－1m－RNAは高値を示した。 末梢血でのWT－1mRNAの発現はみられなかった。 急性骨髄性白血病と同じ治療により腫瘤は消失したが，骨髄WT-l m－RNAは低下したものの高値のままであった。 以上のことから，顆粒球肉腫が骨髄原発であることが示唆され，顆粒球肉腫の再発予知のモニ夕ーとしてWT－1が有用である可能性が考えられた。 （臨床血液44（9）：952～956，2003）