気道粘膜の感染防御機構 デフ工ンシンを中心として

摘要

気道は外気にたえず曝露されていることから，病原微生物の定着 侵入を防ぐためにさまざまな生体防御機構が発達している．咳嗽反射や線毛運動のような物理学的防御に加え，気道粘液には抗原非特異的液性因子とよばれる抗微生物作用をもつ一連の因子群が存在する．デフェンシンはそのなかのひとつであるが，ヒトではおもに好中球に存在するα型と上皮細胞におもに存在するβ型の2種簸が知られている．デフェンシンは幅広い抗微生物作用をもち，自然免疫において重要な役割を演じている．デフ工ンシンの抗菌活性は塩濃度に影響を受ける.Cystic fibrosis（CF）では気道の塩濃度が高いためにデフェンシンの抗菌活性が低下し，そのことがCFでの気道における持続感染の一因と考えられている．また，慢性気道感染症であるびまん性汎細気管支炎症例の血漿や気管支肺胞洗浄液中にはこれらのデフェンシンが豊富に存在しているが，CF同様にデフェンシンの抗菌活性の低下が推測される．デフ工ンシンには樹状細胞やT細胞の遊走活性をもつことも明らかとなっており，自然免疫と獲得免疫の橋渡し的な役割を担っていることが推測される．