わが国の新生児医療の進歩 多くの機器·薬剤の開発と体制整備による急速な進歩

摘要

現在全国に総合周産期センターが整備されつつあるが,わが国における新生児医療は過去数十年の間に急速に進歩した.2001年には乳児死亡率3.1,新生児死亡率1,6と,その値は世界のトップであり,さらにいまも低下し続けている.またわが国の多くの施設で起低出生体重児において80%以上の生存率が得られている.この新生児医療の進歩は,多くの機器や薬剤の開発のみならず,種々の管理ノウハウの蓄積と医療体制の整備による.現在も倫理的·医学的意思決定,臨床心理士の配置,新生児聴覚スクリーニンク,抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体,脳低温療法,多施設共同臨床試験体制の整備などにおいて進歩が継続されている.しかし,乳幼児虐待や高次脳機能障害などのあらたな問題を抱え,かつ医療体制として超重症心身障害児のための病床不足,新生児科医·看護師の不足,薬剤のoff-label useなど,慢性的かつ根本的な小児医療の問題点も抱えているのが実状である.