遺伝子調節化学予防 発癌の遺伝子異常に基づいた新しい予防法の開発

摘要

癌の予防に関する研究はいままでに疫学的な立場からさまざま研究されておリ,喫煙や食事などの要因が解明されてきた．近年，分子生物学の急速な発展に伴い，癌の発生はさまざまな遺伝子異常の蓄積で起こることが明らかになリ，そのような遺伝子異常に即した治療法や予防法の研究が急務となってきた．治療法に関しては遺伝子導入に代表される遺伝子療法の分野が盛んに研究されているが,残念なことに予防法に応用できる研究はまだまだ少ない．そこで,著者らは癌の約半数で変異や欠失によって失活しているp53遺伝子に着目し，その下流で働くさまざまな標的遺伝子を薬剤などを用いてそれらのプロモーターを直接活性化することによりP53の機能を代償し，発癌予防ができるのではないかと考えた?これを著者らは当遺伝子調節化学予防"と名づけ，酪酸やビタミンD_3がその有望な調節薬剤であることを機能的に明らかにした．