脂肪細胞とアクアポリン 脂肪細胞特異的グリセロ-ルチャネル分子·アクアポリンアディボース

摘要

脂肪細胞は細胞内の中性脂肪を分解し,脂肪酸とグリセロールを放出する.脂肪細胞から分泌されるグリセロールは生体の重要な栄養基質であり,とくに肝糖新生の基質となる点で重要である,細胞内外のグリセロール透過にはチャネル分子の存在が想定されているが,その本体は明らかではなかった.著者らはヒト脂肪組織発現遺伝子解析の過程で,グリセロール透過能を有する水チャネル分子のアクアポリンに属する新規分子,アクアポリンアディポェス(AQPap)をクローニングした.脂肪組織AQPap mRNAの発現および血中グリセロール濃度は,絶食により増加,再摂食により低下し,血中インスリン値とは鏡像関係にあった,インスリンによりAQPap遺伝子はプロモーター領域のインスリン反応配列を介して抑制された.インスリン抵抗性モデルでは摂食後のインスリンが高い状態においても脂肪組織AQPap,肝AQP9発現が十分抑制されず,門脈高グリセロール血症,高血糖へと至ることが考えられた.組織特異的な複数のAQPを中心とした生体内グリセロール代謝調節機構が存在し,その破綻が肥満.2型糖尿病の病態の一部であることが推察される.