粘膜免疫における上皮細胞の役割

摘要

腸管上皮細胞（IEC）は従来，バリアーとしての働きがおもに着目され，免疫学的には受身的な組織と考えられてきたが，粘膜局所の炎症·免疫担当細胞との相互作用により腸管免疫において必須の役割を果たしていることが判明してきた．すなわち，lECは恒常的に，あるいは細菌感染や局所の細胞の各種サイトカイン刺激に反応して接着分子などの細胞表面分子やサイトカインなどの各種液性因子を発現する．産生·分泌された液性因子はautocrineに．あるいはparacrineに隣接するlECや上皮細胞間リンパ球（IEL），粘膜固有層の炎症·免疫担当細胞に作用する．このような細胞表面分子の発現や液性因子の分泌により，lECは粘膜局所の炎症·免疫反応において重要な役割を演じている．さらに，lECは自然免疫的機能だけではなく，その表面に発現する主要組織適合抗原，あるいはその関連分子を介して局所のリンパ系細胞に抗原提示を行い，獲得免疫的機能を発現していると推測される．