IPMTと通常型膵癌の併存

摘要

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)は,粘液を産生する腫瘍細胞が膵管内に乳頭状に増殖し,粘液産生と相まって罹患膵管は嚢胞状に拡張するという特異な臨床像を呈する腫瘍である.高齢,男性の膵頭部に多く,主腸管型,分枝型に分けられ.腺腫,粘膜内癌,浸潤癌へと進展する病変であると考えられている.IPMTでは腫瘍細胞の腸管内進展を特徴とするが, IPMTとは離れた膵に通常型膵癌を合併することが多いのも特徴である.著者らの経験ではこうした通常型膝癌の併存はIPM105例中10例(9.5%)に相当し,同時期に切除された膵管癌の125例中10例(8%)に相当した.通常型膵癌併存のIPMTは分根型IPMTで,腺腫, 4cm以下,大半は高齢.男性であった.併存膵癌のなかには, IPMTを契機に膵液細胞診などで診断された粘膜内癌2例.微小浸潤癌1例が含まれていた.一見,高齢,男性の良性と考えられる分枝型IPMTでは併存膵癌の可能性を念頭に膵液細胞診を含めた膵の精査を行う必要がある.