胃MALTリンパ腫とH.pylori 基礎研究の進歩とその臨床応用

摘要

粘膜内リンパ濾胞からは濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)やびまん性リンパ腫(diffuse lymphoma)の各型が発生するが, MALTリンパ腫はmarginal zone(マントル層外層)由来の成熟B細胞が抗原刺激(おもにH.pylori}反応性ヘルパーT細胞から刺激を受け,増殖·腫瘍化したものである.胃MALTリンパ腫の60-90%はH.pylori陽性であり,そのうちの60-90%は除菌治療で治癒する.一方,H.pylori陰性例であっても奏功する例があるため,一度は除菌療法を試みるべきである. H.pylori陰性例の多くにAP12/MALT1キメラ遺伝子が証明され,これらは除菌無効であるが,悪性転化は報告されておらず,比較的予後良好な症例が多いとされる.