トランスポーターの遺伝子多型と薬物動態の個人差

摘要

細胞の膜透過にかかわる薬物トランスポーターが多数同定され,多くの薬物の体内動態を決めるうえで重要な役割を果たしていることがわかつてきた.トランスポ一夕ーの役割は,1肝や腎なとで薬物の消失に関与し,物質の体内動態を決定すること,2血液脳関門のように体内動態に直接彰響しないが,物質の内外移行に対する障壁となり,局所の物質の分布を決定することに大別される.いずれの場合も効果·副作用を規定する要因となりうることから,臨床におけるトランスポーターの重要性が明らかとされつつある.一方で近年,トランスポータ一について多くの遺伝子多型が同定され.in vitro研究,臨床試験などにより臨床医療における意義か注目されている.本稿ではトランスポーターの遺伝子多型研究の現状について例をあげなから,これらの情報を臨床で活用可能な形にするための課題について述べてみたい.