神経回路形成における構造·機能相関軸索ガイダンス受容体はなぜ軸索内局在をするのか？

摘要

神経系の発生過程において，神経回路の構造や機能の形成をつかさどる遺伝子の多くは，時間的にも空間的にも制御された発現パターンを示す．たとえば，回路構造の形成にかかわる軸索ガイダンス受容体の多くは，神経組織中の特定の神経束にのみ分布する．また一方で，回路の機能を担うシナプス関連分子もこれと相関するように特定の神経束に集積する．組織中にみられるこれらの分布パターンは，それぞれの分子が神経軸索の特定のセグメントに「軸索内局在」していることに起因する．分子の軸索内局在にはどのような意味があるのだろうか？ 軸索ガイダンス受容体の分布が厳密に制御されているのは，軸索ガイタンス受容体が神経回路形成のさまざまな場面で主導的な役割を果たしているからである．軸索が伸長する際には，軸索ガイダンス受容体は，成長円錐においてガイド情報を受け取るセンサーとしてはたらく"また，成長円錐以外の軸索部分に局在しているガイダンス受容体は，軸索を伸長する他の細胞に対して経路ラベルとしてはたらく．さらに，軸索上のガイダンス受容体は，軸索の特定の領域にシナプスを形成するといった神経細胞の機能発達にも関与する．ガイダンス受容体の軸索内局在は，神経回路形成において構造と機能を統一する一つの鍵となっているのではないだろうか．