小児咳治療におけるマクロライドの位置づけ

摘要

咳は、小児科診療で発熱とともに最も多い主訴の一つである。咳は本来生理的防御反応であるため、安易に咳止めを投与することは慎まなければならないが、 長引く咳については、咳の特徴を十分に把握し原因を考慮して治療することが重要である。小児の長引く咳の主な原因としては感染症によるもの、気道や咳受容体の過敏性亢進(喘息)による もの、後鼻漏(慢性副鼻腔炎など)によるものが多い。小児の長引く咳の原因のうち、感染症によるものとしては、マイコプラズマ、肺炎クラミジァ、百日 咳の頻度が高く、これらの病原体に対しては、マクロライド系抗菌薬が第一選択薬となる。後鼻漏の主な原因である慢性副鼻腔炎に対しては、小児におしヽてもマクロライド療法が有効である。小児の喘息の慢性炎症や急性増悪への、マイコプラズマ、肺炎クラミジァなどの非定型病原体の関与が示唆されており、14員環系マクロライドであるクラリスロマイシンの使用による改善が報告 ざれている。以上より、小児の長引く咳で、慢性副鼻腔炎、百日咳や非定型病原体による感染症、非定型病原 体の関与が示唆される喘息などが疑われる場合には、マクロライド系抗菌薬の使用を考慮する。