慢性心不全患者におけるトラセミド（ルプラック~R)の有効性，安全性の検討-患者アンケートによるQOLの評価も含めて-

摘要

トラセミド（ルプラック~R)はフロセミドと同じループ利尿薬に分類されるが，他に抗アルドステロン作用を併せ持ち，慢性心不全患者への有用性が高いと考えられている。そこでフロセミドを投与中で心不全症状や所見が不安定，あるいは安定していても頻尿を訴える21症例（男性13名，女性8名，平均年齢72.2 ±11.2歳）に対して，フロセミドをトラセミド4mg/日あるいは8mg/日の1日1回投与に切り替え有効性を検討した。切り替え6力月後において，体重，血圧に有意な変化は認めなかった。心胸郭比は52.0(+-)4.8%から50.6(+-)5.796へと有意に改善（p=0.040），BNP値も148.5(+-)110.5pg/ mLから124.1(+-)99.8pg/mlへと有意に低下（p=0.010〕した。また，尿回数も8.1(+-) 1.6回/日から7.4(+-)1.3回/日へと有意に減少（p=0.018）した。血清クレアチニン値は上昇（p=0.009),血清力リゥム値は4.17(+-)0.39mWq/Lから4.37(+-)0.42mEq/Lへと有意に上昇（p=0.006）した。浮腫は切り替え前11例(52.4%）に認められていたが，切り替え1力月後には1例となり，6力月後には全例で消失した。患者に対して行ったアンケート調查では，排尿に関する。QOLが切り替え前に比し改善したとする回答が多く認められた。また，身体症状は改善され，外出時の排尿に関する心配が軽減されていた。総合評価で「(以前の薬より）現在の薬（トラセミド）のほうが良い」とする回答が85.796を占めた。今回の検討におけるトラセミドの臨床所見，QOL,BNP値の改善，さらに血清力リウム値の保持には，本薬剤が抗アルドステロン作用を併せ持つループ利尿薬であることが寄与していると考えられた。今後，心不全患者の長期予後改善効果を視野に入れたさらなる検討が俟たれる。