射精できない男性が増えている

摘要

射精障害は，一般外来で患者の訴えを聞くチャンスは少ないと考えられている．しかしながら，射精障害のわが国における年齢ごとの頻度の調査はなされていないし，射精障害の程度を測る共通の尺度も存在しないため，その現状に関するまとまった報告がないのが現状である．射精障害は，男性のQOしを著しく低下させ，活力（男性力）の低下を招くことで注目されている勃起障害（erectile dysfunction: ED）のように，広く認知されていいないために，潜在的には多くの患者が存在するも，医療の恩恵に与っていない．メンズヘルス診療上で重要な射精障害は，逆行性射精·膣内射精障害·薬剤による射精障害の3つである．逆行性射精は，若年発症糖尿病患者の増加に伴い治療依頼を受けることが増加している．内服薬で治療可能な場合もあるが，多くは糖尿病性末梢神経障害の進んだ病態であり，治療困難である．膣内射精障害は，男性不妊外来では患者数が急増している．その原因は，不妊治療クリニックで配偶者に対して排卵日に合わせた性交渉の指導（いわゆるタイミンク法の指導）を契機としたものが最も多い．さらに，壮年期から使用頻度の増加する，抗うつ薬や前立腺肥大症治療薬（α_1遮断薬）による射精障害にも注意が必要である．メンズヘルス診療において重要なことは，患者からは自発的に訴えにくい射精障害というもう一つのED（ejaculatory dysfunction）が存在することを認識し，患者の掘り起こしを行うことである．