Diabetic mastopathyの1例

摘要

糖尿病の罹患期間が長年にわたり，さらに血糖コントロールが不良な症例では細小血管症を基盤とする網膜症，腎症，神経症が併発することはよく知られているが，乳腺の腫瘤性病変を合併症として言及している文献はあまり見られない．最近筆者らは16年の糖尿病歴を有し，糖尿病性の網膜症·腎症·神経症を合併した糖尿病患者の乳腺に腫瘤を形成した1例を経験したので，その概要を報告する．患者：73歳，女性.主訴：右乳腺腫瘤.家族歴：母親と兄が心疾患，弟が糖尿病に罹患している．既往歴：乳腺疾患の既往はない．36歳時に子宮外妊娠にて手術を受けている．現病歴：57歳（1983年）から糖尿病を指摘されていたが，医療機関には通院していなかった．60歳（1986年）の時に糖尿病性網膜症の診断で光凝固療法を受けたが，その後も数回に及ぶ眼底出血歴がある（複数の医療機関を受診しているため眼底出血の回数は不明）．