酢酸クロルマジノン投与による前立腺肥大症患者の血清PSA値およびテストステロン値の変動-多施設共同前向き臨床研究

摘要

前立腺肥大症治療に用いら.れる抗アンドロゲン剤は，血清PSA値を低下させることから前立腺癌の診断に影響を及ぼすことが懸念されている.前立腺肥大症診療ガイドラインDでも，抗ァンドロゲン剤の長期投与が潜在する前立腺癌の早期診断をマスクする可能性について注意を喚起しており，抗アンドロゲン剤投与中はPSA値の変動に注意を払う必要がある.ステロイド性抗ァンドロゲン剤であるァリルエストレノールや5a還元酵素阻害剤であるフィナステリドあるいはデュタステリド投与によるPSA値変動についてはすでに報告がなされているが, ステロイド性抗アンドロゲン剤である酢酸クロルマジノン(CMA)はPSA測定検査がない時代に開発された薬剤であり，PSA値に対する影響についてはこれまで十分に評価されてこなかつた経緯がある.これに対して，以前われわれはCMAを投与された前立腺肥大症患者のPSA値をカルテベースで調査する後ろ向き研究を行い，CMA 50 mg/日を16週間程度投与するとPSA値が投与前値の約50%にまで低下することを報告した.