閉経後女性の動脈硬化に関する研究 —経口および経皮エストロゲン補充による 動脈硬化形成に関与する因子と血管の変化一

摘要

Framingham研究1'などの疫学研究によると，冠動 脈疾患や脳血管疾患などの心血管疾患の発症頻度は， 閉経前の女性では同年代の男性に比べて少ない。し かし，女性のそれらの頻度は，50歳前後の閉経期以 降では脂質異常症，糖尿病，高血圧症などの生活習 慣病の増加に伴い加速度的に増加し，70歳以降では 男性のレベルに近づく。この現象は，加齢に加え閉 経期の卵巣機能の衰退に伴う内因性エストロゲンの消失が一部関与するものと考えられている。これら の現象を改善または予防するために欠落したエスト ロゲンを薬剤として補充する治療法がホルモン補充 療法(HRT: hormone replacement therapy)でめる。