災害と静脈血栓塞栓症

摘要

災害後の避難生活では，車中泊，狭い避難所，床生活（雑魚寝）などによる下肢静 脈うつ帯，ライフラインの途絶による水.食料不足およびトイレ不足による摂水制限による脱水，避難する際に瓦礫でケガをするなどによる血管損傷，など，Virchowの 三徴が重なることで，静脈血栓塞栓症（VTE)が起きやすい.また，大規模災害では， さまざまな疾患発生が遷延し，VTE:は最も長期にわたって発症する可能性がある.さら に，VTEは震災直後の肺塞栓症による突然死のみでなく，慢性期の脳硬塞，心筋梗塞発 症と関連する可能性があり，その4防は長期的な二次的健康被害の予防に重要である.そ のためには，災害後の無防備な車中泊を避けることが最も重要であり，避難所環境を災害 後に一刻も早く良好にすること，特に簡易べッドの導入が必要である.