免疫系と神経系をつなぐ分子-免疫系と神経系で働く新しい分子機構

摘要

免疫系と神経系との間には相互調節機構が存在 する.神経系による免疫系制御の1つとして，ァドレ ナリン受容体を介した樹状細胞（抗原提示細胞）の機 能調節があげられる.ノルァドレナリンゃァドレナリンは，alpha_2受容体を介して樹状細胞の抗原取り込みを 促進し，beta受容体を介してサイト力イン産生バランス を調節する。アドレナリンbeta受容体を介したシグナル は，炎症性サイト力インの産生を抑制するが，アレルギー増悪因子であるィンターロイキン-33の産生を上 昇させる，このサイト力イン産生バランスの変化は， ストレス時における免疫力低下とアレルギー性疾患の 増悪に関係していると推察される.一方，免疫系によ る神経系制御の1つとして，Toll様受容体(TLR)7を 介した文脈的恐怖記憶の強化があげられる.この現象 は，ウィルス感染時の状況を，好ましくない状況とし て記憶し，その状況を回避するための機構を反映して いるのかもしれない.免疫系と神経系は情報伝達物質 や受容体を共有し，それらの分子を介して互いに連携 し，免疫反応と危険回避のための行動を併せた広い意 味での生体防御において重要な役割を果たしていると 考えられる.