子どものくり返す痛みの診かた·考えかた 日本小児心身医学会くり返す子どもの痛みのガイドラインの視点から

摘要

くり返す痛みは小児科臨床においてしばしば遭遇する症状であり，海外の研究における有病率は4-37%と高率である.しかし我が国においては，血液検査や画像検査に明確な異常所見がない場合，くり返す痛みをどう理解し，どう対応するのかについて統一された見解はない.その理由の一つとして，痛みは痛覚という知覚と不快な感情や不安のような情動の雨者により规定されているために，医療者を含む他者による客観的評価が難しいことが挙げられる.したがって痛みの発生機序を理解し客観的に評価することが重要である.痛みの発生機序については，痛み刺激は末梢の侵害受容器から上行性の経路を通じて中枢ネットワークで認知され，下行性経路から伝達されるが，この経過において情動·心理要因が関与する.また評価の際には，生理学的指標， 行動観察，自己評価等を，新生児，乳児，幼児，小児期といった子どもの発達段階に併せて選択する.日本小児心身医学会では子どものくり返す痛みの発生機序，情緒·心理的要因による修飾，痛みの評価法を総論とし，子どもの代表的な痛みである腹痛，頭痛を各論として，「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」にまとめた.痛みは子どもにとつ.て有害であるだけではなく， 痛みとそれを克服する過程は心理社会的成長において貴重な経験となる.小児科医が子どものくり返す痛みを理解し，痛みを医学的に軽減するのみならず，子ども自らが痛みを克服するよう支援することが望まれる.