経尿道的半精早切除術後に両側精巣上体炎を併発したが，精液所見の改善したミュラー管嚢胞の1例

摘要

症例は34歳の男性で，6年間の不妊，血精液症，精液量の減少にて受診した．勃起·性交は正常で，排尿障害·血尿は認めなかった．配偶者の産婦人科的異常も認めず．内分泌学的に異常なく，精液検査では精液量1．Oml，多数の赤血球と少数の運動精子を認めた．MRI検査で前立腺正中部に嚢胞状腫瘤を認め，精管精嚢造影にて射精管遠位端につながる嚢状の変化を認めた．以上よりミュラー管嚢胞による遠位射精管狭窄の診断にて，精巣生検·経尿道的半精阜切除術を施行した．精巣生検で造精機能に異常を認めなかった．術後6日で退院したが，術後24日目に左精巣上体炎のために入院．パニペネム1．Og/dayを投与したが，発症9日目に右精巣上体炎を併発した．イセパマイシン追加投与により軽快，発症21日目に退院となった．術後4カ月の精液所見は精液量2．5ml，連動率70．0％，精子数14．0×10~6/ml，赤血球の混入なし，と改善し術後7カ月で妊娠が確認された．