シンポジウム4「ARTに関連した最新技術」1）卵巣内卵母細胞の長期培養と異種移植

摘要

畜産の分野には，ウシやブタの卵巣から，発育を完了した卵核胞期（GV期）の卵母細胞を体外に取りだし，成熟させて，受精させる技術がある．これより一歩踏み込んで，卵巣内のより小さな卵母細胞を利用しようとする技術が開発されつつある．卵巣内には，発育開始前の卵母細胞（ウシやブタでは直径約30mum）や直径が12-mumに満たない発育途上の卵母細胞が莫大な数存在している．このほとんどは原始卵胞内にとどまっている発育開始前の卵母細胞であり，これらは発育を開始することなく原始卵巣内で退行するか，発育の途上で退行してしまうと考えられている．これら卵巣内の小さな卵母細胞を体外で人為的に発育一成熟させる技術が，現在，「長期体外培養」と「異種移植」の2つの方向から開発されつつある．