不妊診療における臨床データ管理·医学統計解析ソフト'sarah Base'の有用性

摘要

孜々は,診療や検査によって発生するデータを精密かつ簡単に蓄積し,分析することを目的として,臨床データ管理·医学統討解析ソフト「Sarah Base」(セーラベース)を開発した.このソフトを使うことで学会でのプレゼンテーションや論文作成を精密に行い,さらに進んだ研究計画を立てることができる.なお,セーラベースにはいくつかの補助機能が使えるように設計されている.検査センターからの報告をフロッピーディスクでデータベースに取り込むことや,入力データの慣用句設定,新規項目の作成がユーザー側で容易に行うことができる.さらに,日本産科婦人科学会の「生殖医学の登録」の報告については,セーラベースに蓄積したデータを容易に集計·印刷できるオプションソフトを開発し,過去2回にわたって報告を行った.我々の医院では開院1992年6月以来, 4,398人の挙児希望患者が来院し,その妊娠率は44.9%であった.生殖補助医療(ART)の妊娠率は不妊原因に左右される.そこで, 1992年から2001年の間に当院にてARTを施行した4,826周期において,セーラベースを用い,それぞれの不妊因子ごとに妊娠率を検討した.治療周期あたりの妊娠率は抗精子抗体群で25.6%と最も高く,男性因子で16.7%と最も低かった.我々は,不妊診療において,精密かつ正確なデータ管理は必要不可欠であると考える.