急性大動脈解離に合併した 無症候性急性膵炎と膵仮性囊胞の1例

摘要

患者は60歲，男性.早期血栓閉塞型の急性大動脈解離(DeBakey IIIb)を発症し緊急 入院となった，高アミラーゼ血症を呈し，第7病日のCT検査で急性膵炎および膵仮性囊 胞と画像診断したが，急性,炎に特徴的な臨床症状を欠いていた.MRI検査で，膵実質 の所見が乏しい一方，膵周囲に多発性囊胞性病変や脂肪組織の変化を認めた，さらに入院 直後から急性腎不全も併発し，一時的な血液浄化法を要した.大動脈解離の急性期に膵仮 性囊胞への侵襲的処置は高い危険性を伴うため，保存的薬物治療を行った.大動脈解離発 症後5週で膵仮性囊胞は退縮し始め，退院後に完全消失を確認した.本症例に観察された 急性,炎，膵仮性囊胞，液体貯留，急性腎不全の早期発症の原因は血流障害では説明困難 である,膵実質の変化に比べ膵臓周囲の変化が著しいことから，急性大動脈解離による強 い炎症反応が後腹膜腔臓器に波及した結果と推測した.