冠動脈穿孔に起因した心停止の1救命例

摘要

患者は83歳男性.近医で慢性腎不全，高血圧で加療されていた.2011年6月に左前 下行枝(LAD)近位部と中間部の高度狭窄病変に対して冠動脈ステントが留置された. 2011年12月に労作時の胸痛が出現したために侵襲的冠動脈造影検査を施行した.LAD 中間部のステント留置中枢側にステント内再狭窄を認めたため，同部に経皮的冠動脈形成 術を施行した.ステント内をバルーンにて高圧で拡張後に冠動脈ステントを留置したが， その直後に冠動脈穿孔が生じた.バルーンカテーテルにて長時間圧迫するも止血に成功せ ず，手技中に心室頻拍から心停止を来し，蘇生処置をしながら経皮的心肺補助装置を導入 した.経胸壁心エコー検査で多量の心囊液狞留を認め，心囊ドレナージを施行した.その 直後に心拍は再開した.冠動脈穿孔部にPTFEカバードステントを留置し，造影上は造 影剤の漏出の所見はなかったが，心囊ドレーンより血液が100 ml/時で流出した.手術適 応と判断し，他院心臓血管外科に転院のうえ緊急手術が施行された.胸骨正中切開下に心 膜を切開したところ，LAD穿孔部からの動脈性出血によりステント留置部は膨隆してい た.大伏在静脈グラフトをLAD末梢側に吻合し，ステント留置部位の近位側でLADを 結紮止血した.術後経過は良好で独歩退院した.