Ic群抗不整脈薬での発作性心房細動治療中に生じた心室細動に関し,追加投与したβブロッカーの関与が疑われたBrugada症候群の1例

摘要

患者は52歳,男性.若年突然死の家族歴あり.2004年1月8日,発作性心房細動にてpilsicainideおよびdigoxinの処方を受けた.同年1月16日よりatenorolの併用を始めたところ,午前10時頃,突然意識消失し当院へ救急搬送された.来院時には意識は回復していたが,救急室にて心室細動を来し再度意識消失を認めた.心室細動停止後の心電図ではV,にてcoved型ST上昇を認めた.入院後V,のST波形はcoved型からsaddle back型へと変化した.Ⅰ群抗不整脈薬にβブロッカーを追加したことにより心室細動が生じたことが疑われるBrugada症候群の症例と考えた.Brugada症候群患者においてβブロッカー投与はST上昇を増加させると報告されているが,現在までにβブロッカー投与により心室細動が誘発されたという報告はなく貴重と思われたため報告する.