小腸移植の歩みと 世界の趨勢と展望

摘要

小腸移植は重症腸管不全に対する根本的な治療法として期待されており，これまで約2，400例の移植が行 われている。拒絶反応や感染症のため小腸移植のかつ ての成績は満足できるものではなかったが，免疫抑制 療法の発達，感染症管理の進歩などにより最近の成績 は向上し，他の臓器移植の成績と比較して遜色のない レベルになっている。腸管不全治療全体の中での小腸移植の役割，適応と その時期，問題点，今後の課題についても最近の議論 の中でずいぶん整理されてきた。腸管不全治療に携わ る小児科医，消化器内科医，小児外科医などと移植医 との連携，共通の認識の元に今後ますますの発展が， 待される。日本国内における小腸移植は，いまだごく限られた 施設で少数例が行われているのが現状であるが，その 成績は海外のそれに匹敵する。