難治性鼻出血への対応

摘要

疾患名でもあり症候名でもある鼻出血は耳鼻咽喉科領 域の中でも，患者がその異常を顕著に自覚する症状であ る.鼻出血は解剖学的な損傷血管により，静脈性の出血 と動脈性の出血に大別される.これらのうちで，最も多 いのは指先などの物理的刺激などによる特発性の鼻出血 であり，出血部位としては内頸動脈由来の血管と外頸動脈由来の血管が多数吻合するキ一セルバッハ（Kiessel-bach)部位が大半を占める.これらによるものが鼻出 血全体の約70-90%を占めるとされている.しかしなが ら，顎動脈の分枝である蝶口蓋動脈系を出血点とする鼻 腔後部よりの出血では，後鼻孔から咽頭腔にも大量の血 液が流れ落ちることがあり止血操作に難渋を来し重症なものとなる.