右上葉切除術中に突然肺うつ血をきたした慢性壊死性肺ァスペルギルス症に対する緊急胸壁合併右肺上葉切除術

摘要

慢性関節リウマチ(RA)関連肺線維症に右上葉の慢性壊死性肺ァスペルギルス症を合併した47歳·男性である.感染が6力月間遷延したことと肺血流シンチグラムで右上葉の血流欠損がみられたため右上葉切除術を行つた.第5肋間後側方切開で開胸すると上葉に強固な癒着がみられたが，中下葉の癒着はほとんどみられず容易に肺門の剝離ができた.A~2bと上肺静脈および右肺動脈上幹を結紮切離した途端に，右上葉は肝臓のように緊満し右肺動脈上幹の上葉側の断端から血液が噴出した.これを再結紮すると肺表面から血液が汗のように染み出し，上棄気管支から喀血が始まった.急遽右上葉気管支を切断し気道出血を止め，肺から染み出す出血をタオルで押さえながら高位後側方切開を追加し，第1-第5肋骨まで合併切除し右上葉を切除した.第2肋骨を切除するころには右上葉からの出血は止まつた.肺門を処理するまでの出血量は200ml肺門結紮後は3,300mlであつた.手術時間410分であった.本例では右第2-第4肋間動脈と内胸動脈が慢性炎症により右上葉の肺循環に流入し， 左-右(L-R)シャントを形成していたため起きた事例であった.これ以降，感染性肺疾患に対する手術では流出肺静脈を最後まで結紮しないようになった教訓的な手術であった.