聖路加国際病院皮膚科を受診した糖尿病性足漬瘍患者60症例における足切断予防に関わる因子の検討

摘要

背景：糖尿病性足潰瘍は，糖尿病患者のQOLを左右する重要な合併症の一つであり，悪化時には足切断という結末を迎える患者も少なくない.本研究は，足切断に至る患者のリスク因子を統計学的に解析し，その予防策を検討することにより，足切断患者の減少を図ることを目的とする.方法：2000年から2007年までの7年間に聖路加国際病院皮膚科を受診した足潰瘍患者60名（男49名， 女11名）について，retrospective cohort studyの研究デザィンにて検討を行った.結果：足切断群·非足切断群共に長期に糖尿病に罹患しており，合併症の頻度も高かった.特に足切断群は，心筋梗塞の既往，透析導入者が有意に多かった(p = 0.02, P = 0.05). HbAle値は両群共に高値を示したが，改善を認めた者で足切断を回避できる傾向にあつた.また，潰瘍発症時の血清アルブミン及びへモグロビン値は両群ともに低いが，非切断群は2力月後の値は上昇しており，栄養面の改善が足切断の回避につながると考えられた.また，骨髄炎への波及，皮膚科を定期的に通院し加療を受けることが切断の予後に影響した.考案：糖尿病性足漬瘍患者の足切断の予防として， 足潰瘍発生後の糖尿病の病勢のコントロール，②低アルブミン血症·貧血の改善，③反復する細菌感染症の予防と治療，透析患者およぴ心筋梗塞の既往のある患者での定期的検診，⑤皮膚科通院による適切な評価（血流·神経障害等）及び潰瘍治療が重要であると考えた.