ィンターネット関連妄想を呈しFacebook利用中止により改善した妄想性障害の1症例

摘要

ィンターネットに関連した妄想の報告は1990年代後半からみられるが，近年にな りCMC (computer-mediated communication)が精神病症状発現に寄与したと思われる症例 の報告が出てきている。CMCにおける特徴である，「超個人的hyperpersonaljコミュニケ一 ションによって現実性の把握なしになされる親密さの形成，情報が氾濫し透過性が高いこ とによる公私境界の維持困難，などが脆弱性を持つ患者に対して精神病症状発現を促進す る可能性が指摘されている。今回われわれが経験した30代男性症例は，仕事上で思わぬ 高評価を受けたのちにインターネッ卜上の匿名掲示板に個人情報を載せられ誰謗中傷され ているという被害妄想を呈し，次第に妄想範囲が拡大したが，Facebookが重要な役割を 果たしておりその利用を中止したところ無投薬で妄想が軽減し生活機能も改善した。この 症例を通じて，CMC開連の妄想体験のいくつかの特徴を実感し考察した。高度情報化社 会においてこの領域の知識や経験は今後ますます重要となるであろう。