精神病院における急性肺血栓塞栓症 身体拘束患者に対する深部静脈血栓症予防の必要性

摘要

われわれは精神病院に医療保護入院，措置入院中に身体拘束されていたことが原因で生じたと考えられる重症急性肺血栓塞栓症の2症例を経験した。 2症例はともに重篤な状態であったが，集中治療の結果，救命された。 近年身体拘束中の精神病院入院患者の急性肺血栓塞栓症の報告が世界的にも散見されるようになっており，発症は稀とはいえない可能性がある。 精神病院において身体拘束中の精神病患者は，向精神薬の作用，（鎮静と身体拘束に伴う）身体不動化による血流うっ滞，身体拘束による静脈損傷，あるいは脱水などの原因により，深部静脈血栓症から急性肺血栓塞栓症を発症するリスクが高いと思われる。 しかしそのような患者に対する深部静脈血栓症の予防処置に関するガイドラインは今のところどの学会からも発表されていない。 予防処置の必要性は明らかであると思われるので，各病院で深部静脈血栓症の予防のためのストラテジーを作ることが望ましい。