自己像幻視ではどうして私が見えるのだろうか？愛知医大を受診した9症例の検討

摘要

抄録：自己像幻視の臨床像を多数例から明らかにするために，2005年に愛知医科大学精神科を受診した3，087名の診療録記載から幻視を認めた121名を抽出し，その中から自己像幻視を呈した9名を症例報告した.自己像幻視は人物の幻視の約14％に認められ，決して稀な症状ではなかった。9症例の診断名は，内因性精神病（統合失調症，急性一過性精神病性障害）4名，器質性精神病（てんかん，認知症）3名，その他2名だった。9症例のぅち，Deningらによる狭義の自己像幻視の定義を満たしたのは2名，Cheyneらによる体外離脱体験の定義を満たしたのは3名にすぎなかった.自己像幻視は症候学的·疾病学的に多彩な症候群であり，一括した議論は難しいが，Zamboniらの視覚失認を伴った自己像幻視の症例報告から病態機序の考察を試みた。