病原細菌の分泌装置：その機能と病原性発揮のメカニズム

摘要

細菌は多様な分泌（透過）装置を保持しており，それらは環境への適応.恒常性の維持，病原性発揮に利 用されている.これまでに2つの膜透過装置と7つの分泌装置がグラム陰性·陽性菌から報告されている.このなかでもIII型分泌装置は病原因子を宿主細胞内に直接注入する機能を有している.宿主細胞に移行し宿主の生理機能を攪乱する病原因子はェフエクタ一と定義されており，近年の病原因子論の発展は，このェフエクタ一解析の進展によるところが大きい.病原細菌の分泌装置と分泌タンパク質の解析は，病原細菌の感染戦略を理解する上で重要であり，本稿では最新の知見を交えてこれらについて解説したい.