医師の立場－脳神経外科医の視点から

摘要

最新の放射線治療は、日常生活や生命維持に重要な正常組織（臓器、血管、神経など）に発生したがんの治療において重要な役割を担っている。放射線（X·γ線、陽子線、炭素線）の照射範囲を高精度に制御し、正常組織への影響を最小限にできるため、「患者にやさしい治療」といわれている。脳に発生する神経膠芽腫は、周囲の正常組織内にがん細胞が散らばる浸潤が顕著であり、また放射線への耐性が大きいことから、前述の最新の放射線治療でも対応が困難である。皮膚悪性黒色腫、放射線治療を行った後の再発がん、多発性の転移性がんなども同様で、治療成績がきわめて不良か、治療自体を断念しなくてはならない。BNCTは細胞選択的な照射によりこれらの治療困難ながんを治療できる唯一の放射線治療として期待されている。脳腫瘍治療を専門とする外科医の立場から、加速器BNCT照射、ジステムへの期待と見通しを述べる。